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「はじめに」
私には52歳という若さでこの世を去った叔父がいます。3回忌の時、叔父の学生時代の友人も集まり、思い出話を語ってくれました。「自分の出身地を静岡県とか浜松の隣とかって言えばいいのに、誰に対しても必ず磐田って言っていたよね。きっとそれだけ生まれ育った磐田が好きだったんだよ」。私の叔父は、学生時代から名古屋を生活の拠点にして過ごしてきました。それでも、生まれ育った故郷・磐田のことが大好きで誇りに思っていたと、私は感じます。そんな叔父のように磐田を誇りに思い、たとえ仕事や家庭の事情で磐田を離れたとしてもいつかは磐田に帰ってきたい、あるいは磐田にずっと住み続けたいと思ってくれる人が一人でも多くいるまちになってほしいと願っています。
そのような願いを抱いているのは、私だけではありません。私たち、磐田青年会議所メンバー全員がそういう願いをもっているはずです。その願いを成就させるためには、私たちがまちや社会の課題に対して私たちのすべきことを必死に考えて行動していくことが必要です。たとえ、それが本当に相手の求めていることかどうか分からなくても良いのです。スティーブ・ジョブズが「多くの場合、人は形にして見せてもらうまで自分は何が欲しいのかわからないものだ」と語っているとおりです。たとえば近所のおばちゃんが勝手にお見合い相手の写真をもってくるような、そんな「おせっかい」みたいなことで構いません。磐田青年会議所だからこそできる「おせっかい」を形にし、多くの人に見てもらい、知ってもらうことで、磐田青年会議所がこの磐田の地にますます必要な存在になっていくと信じています。
「ありがとうの交換」
私は磐田青年会議所に関わるすべてのみなさんや、私たちを支えてくれる人たちと「ありがとうの交換」をしたいと思っています。
磐田青年会議所は創立60周年という節目の年を迎えます。この60周年を迎えられたのは、どんな困難な状況下であっても歩みを続けてきた諸先輩方の活動があったことはもちろん、これまで支えていただいた関係諸団体をはじめとする地域の方々のご理解とご協力があったからこそだと思います。
60年というと、人間でいえば「還暦」にあたります。還暦とは干支が一巡して「もとの暦に還る」ことに由来し、これまでの人生を振り返る節目の機会になります。したがって、私たちは60年の歩みを振り返り、諸先輩方や関係諸団体をはじめとする地域の方々へ感謝の気持ちを伝えなければなりません。そして、磐田青年会議所に関わるすべての方に今後の飛躍を誓うことで、引き続き協力しあえるような関係を築いていく必要があると考えます。
もちろん、感謝の気持ちを伝えるのは諸先輩方や関係諸団体のみでは十分ではありません。共に活動しているメンバーや日頃からお世話になっている家族にも感謝の気持ちを伝えることは非常に重要です。一緒に活動しているメンバーたち、JC活動をしている時に家を守ってくれているパートナーや子供、今まで自分を育ててくれた両親などにも感謝の気持ちを伝えなければなりません。
そうして、私たちが感謝の気持ちを伝えれば、相手もきっと「こちらこそありがとう」と感謝の気持ちを伝えてくれるはずです。目に見えない大切なものだからこそ、お互いに感謝の気持ちを「ありがとう」という言葉にのせて伝えることで、今まで以上に信頼し合い、協力し合えるような関係を構築していくことができます。そうすることで、より多くの人を巻き込んだり、各種団体と連携をとったりした事業を展開し、磐田のまちや社会に大きなインパクトを与えることが可能になるのです。
「自利利他の功徳に満ちた拡大」
私は一人でも多くのメンバーと青年会議所活動をとおして共に成長し、磐田をよりよくしたいと願う生涯の友を増やしたいと願っています。
近年、磐田青年会議所のメンバー数は減少傾向にあります。それにより、実現できる事業の選択肢が狭まり、会員の士気の低下につながってしまいます。また、青年会議所が提供する成長の機会を享受し、磐田のために行動を起こそうとする未来のリーダーの数も減ってしまいます。これは磐田青年会議所のみならず、現在から未来へかけて磐田のまちの活性化に大きな影響を与えることになります。
メンバー数増加のためには、拡大候補者に対し、会員になるメリットを知ってもらったり、入会後のイメージをしてもらったりすることが必要だと考えます。また既存会員にも新入会員が増えることのメリットを示す必要があります。
青年会議所で会議やセミナーに出席していると、「利他」という言葉をよく耳にします。しかし「利他」という言葉の語源は、「自利利他円満」という仏教用語からきています。拡大に関しては、まずは拡大候補者にも既存会員にも、自分にとっての利益や幸せを求める「自利」という心をもってもらわなければならないと考えます。つまり、拡大候補者には磐田青年会議所で活動することのメリットを求める「自利」の心、既存会員には拡大することで自身や磐田青年会議所にもたらす利益を求める「自利」の心が必要です。その「自利」の心と、磐田のまちや社会のために何かしたい、誰かの助けになりたいと願う「利他」の心とは、仏教における「智慧」と「慈悲」のようにどちらか一方でも欠けてはならないという補完的関係にあります。すなわち、「自利」と「利他」の両方がそろわなければ拡大活動は力強く前進することができません。「自利利他」の精神をもって行動することで、メンバーにも磐田市民にも磐田青年会議所の功徳が十分に満ち足りた「円満」という状態になることができるのです。
「子供たちに自己肯定感の向上を」
私は子供たちが「生きる力」を身につけ、めまぐるしく変化し続ける時代を精一杯生き抜けられるように成長してほしいと願っています。
しかし、日本の子供たちの自己肯定感は諸外国に比べ低い状況にあり、決して十分な「生きる力」を身につけているとはいえない状況にあります。実際、磐田市がある静岡県においても「自分は価値のある人間」だと思っている子供は約6割しかいないという調査結果もあります。子供の自己肯定感が低いことは、心理的な健康やチャレンジ精神など、様々な側面で悪影響を及ぼす可能性があります。
最近の調査研究によれば、体験活動の少ない子供に比べ、多くの体験活動を行った子供のほうが、自己肯定感が高い傾向にあるということが明らかになっています。つまり子供が自分自身を成長させ、自分に自信を持つために、体験活動は非常に重要なものです。体験活動における成功体験や新たな学び、挑戦の過程などを通じて、子供は自己肯定感を向上させることができるのです。将来を担う磐田の子供たちへの体験活動をおこない、子供たちの自己肯定感を高めることで、十分な「生きる力」を身につけた子供を一人でも増やしていけるように運動を展開していきます。
また子供の成長と発達において、大人の役割は非常に重要です。それは親や教師はもちろん、地域の大人にも言えることです。社会全体で子供を育て守ることが求められる現代だからこそ、大人たちが子供たちをめぐる課題に対して理解したり、解決に向けて取り組んだりしていく必要があります。
「強みを生かしたまちづくり」
磐田には、貴重な歴史・文化や豊かな自然など全国に誇れる多くの資源があります。そのような磐田の強みをまちづくりに生かすことで、市民の幸福度の向上を実現したいと考えています。
例えば、磐田市はジュビロ磐田や静岡ブルーレヴズの本拠地であること、卓球オリンピック金メダリストの水谷隼選手、伊藤美誠選手の出身地であることから、スポーツのまちとして認知されています。スポーツは健康増進、交流促進、教育、観光振興など、様々な面で非常に有効です。近年、スポーツの定義も広がってきていますし、多くの人にスポーツの魅力を伝えたり、身近なものとして感じてもらったりすることで、スポーツの効果が現れ、市民の幸福度の向上につなげることができます。このように全国に誇れる磐田の資源、磐田の強みを生かしたまちづくりをして、幸福度の高いまちを実現していきます。
また、磐田のまちをより良くするために、異なる文化や価値観をもつ人との交流は欠かせません。例えば外国人と交流することは多文化共生の実現につながります。そして他の青年会議所の活動を知ることも重要です。私たちの同志であり、良きライバルの活動内容を理解することで、その内容を今後の活動の参考にできたり、私たちの意欲向上につなげたりすることができます。彼らから得た知識や経験は私たちの糧となり、磐田のまちづくりに生かしていけるのです。
「結びに」
青年会議所では、JCI Missionに書かれているとおり、リーダーシップの開発と成長の機会が提供されています。せっかく磐田青年会議所に入会し、活動しているにもかかわらず、この機会を利用しないのはもったいないことです。理事長である私はもちろん、メンバー一人ひとりが磐田青年会議所だからこそできる「おせっかい」に積極的に取り組み、自身の資質向上につなげましょう。もちろん活動する中で壁にぶち当たることやつらいこともあるかもしれません。しかし一人で悩み苦しむ必要はありません。手を差し伸べてくれる素晴らしい仲間がいます。差し伸べてくれた手を強く握りしめ、磐田青年会議所の素晴らしい仲間とともに、「明るい豊かな社会の実現」に向けて、60周年という記念の年を走り切りましょう。
一般社団法人磐田青年会議所
第61代理事長 平尾 顕正